//農家の人柄と味が一致する菓子を。「甘納豆かわむら」の哲学

農家の人柄と味が一致する菓子を。「甘納豆かわむら」の哲学

金沢市にし茶屋街にある甘納豆専門店「甘納豆かわむら」。こだわりの甘納豆を求めて全国からお客さんが集う人気店だ。落ち着いた店内には豆菓子を中心に多彩な商品が並ぶが、その中に国造柚子を使った羊羹も置かれている。2階のカフェスペース「サロン・ド・テ・カワムラ」では、国造柚子ソーダや柚子シャーベットも提供。国造柚子の上質な楽しみ方を提案し続ける「甘納豆かわむら」オーナーの河村洋一さんにお話を伺った。

伝えたいのは豆本来の美味しさ

 

 

「私たちっていうのは、曽祖父の時代、今金沢市の大手堀の前の梅元町というところで、最初の立ち上げが行われました。それから浅野本町、乙丸町と移動して、私の叔父の代で甘納豆業というのを終了しております。

それから15年ほど経ちまして、私が一からにし茶屋街で『甘納豆かわむら』を立ち上げたのが2001年の3月です。」

 

甘納豆屋に生まれついた河村さんは、幼い時から甘納豆業に就く以外の選択肢を持ったことが無かったと話す。そんな自然な流れの中でどのような甘納豆屋になろうかと考えた時、お客さんに直接お菓子を販売して豆本来の良さを伝えることに行き着いたという。

 

「私がこの店を立ち上げる以前、金沢には甘納豆の小売専門店というのが存在しなかったんですね。それまでの甘納豆業というのは、他のお菓子屋さんに卸しをして、そこでまた別の製品に生まれ変わるというのが使命だったんです。

皆さんに卸して買っていただこうとなると、どうしても日持ちが優先されるんですよね。そうすると製品作りではとにかく砂糖をたくさん使う。砂糖は天然の防腐剤ですから。でもそれをすると、豆本来の良さっていうのが消えてしまう。例えば、豆の質感が1、砂糖の質感が2とすると、もう砂糖が勝ってしまってますよね。我々が目指すものは、豆が1とすると砂糖が0.5。そこに収めたいっていうのがあったもんですから、そうするとどういうことが起きるかというと、確かに甘くなくて風味は強いんですが、すぐに痛んでしまう。防腐剤を入れるという方法もあると思うんですがそれはやりたくない。となると作ってすぐ売るしか手はない。なので、現在の小売の形にはこだわっています。」

 

店内を見ると、ほぼ全ての商品説明に主要材料の産地が明記されていることに気がつく。豆本来の美味しさを伝えるために、河村さんは材料にもこだわっているという。

 

「材料っていうのはご縁が一番あるかなって思います。結局のところご縁がある材料に行き着いて、それを私たちが加工するってことになるんですけれども、お付き合いが続いているところは生産者の豆に対する思い入れ、たくさん売りたいという考えとは違う素朴さがやはり表現できるんですよね。豆の生産者の人格と味が一致してくるということです。」

 

応援したくなる素朴さが国造柚子にはある

 

 

「甘納豆かわむら」では羊羹や柚子ソーダなど、国造柚子を用いて独自の菓子作りをしている。そもそもの国造柚子との出会いはどのようなものだったのだろうか。

 

「昨年(2017年)、私の知人から国造柚子を使ってもらいたいっていう連絡が入ったんですよ。私たちとしても加賀野菜や能登野菜、材料として色々素晴らしいものはあるんですけど、もっと何か別のものがあればなっていうのは思っていたところだったんです。

というのも、例えば加賀野菜は非常に有名だし、金沢市内に出回っている状況ですよね。そういうものではなくて、材料を自分たち自身で発掘して手がけさせてもらって、同時にその農作物を育てたいって気持ちがありました。

そこにちょうどお話頂いて非常に嬉しかったですし、私たちが国造柚子を材料に使ってチャレンジしたいなと。」

 

河村さんは2017年の国造ゆずまつりを訪れ、そこで見た光景が国造柚子を仕入れる決め手になったという。

 

「国造柚子に関わっている方たちがあんまりにも良い方ばかりだったので、それが一番の決め手なのかもしれないです。生産者と、それに携わっている方々の人柄を見てると、やっぱり出来上がった商品と一致しているんですよね。

どういう人柄かというと、素朴さでもあるし、商売っ気のなさ、売ろう売ろうとする気持ちのなさ。何か無理な宣伝もなさらないし、説明もなさらないし、ただ柚子を置いてその前でにっこり笑ってらっしゃる。そういう柚子って感じがすごくしたんですよね。」

 

素朴な人柄に触れると応援したくなると話す河村さん。

国造柚子で製品作りをするにあたって意識していることを訊ねると、答えからは材料に対しても生産者に対しても常に相手ありきの河村さんの姿勢を窺うことができた。

 

「取れる量は毎年違うと思うんですけれども、無理のない量を私たちに供給していただいて、それを誠実に商品にする。国造柚子の良さにパンチ力をつけて表現して、お客様に食べていただく。その一手に限りますね。」

 

“柚子ありき”の発想が生みだした鮮烈な食体験

 

 

材料のありのままを引き出すことをポリシーとして菓子作りに向き合う「甘納豆かわむら」。それでは、実際に国造柚子はどのように表現されているのだろうか。

 

「国造ゆず羊羹では、もともと持っていたレシピにおける柚子の配合を飛び越えて8倍くらい多く入れているんです。そうすると問題になるのは離水なんですよね。でも柚子の量は減らしたくない。ということで、羊羹としては欠点であるかもしれないけど、それ以上に柚子ありきの羊羹を作りたいっていうので、見ようによっては水羊羹のような羊羹という今の形に落ち着きました。」

 

ゆず羊羹の製法と同様、工夫を凝らした提供方法が取られているのが、店舗2階に併設されているカフェスペース「サロン・ド・テ・カワムラ」で飲むことができる国造柚子ソーダだ。

 

「私たちが甘納豆を作る考え方で飲み物を作ったらこうなったっていうのが国造柚子ソーダなんですよね。具体的には、スロージューサーで柚子をすり潰したものをかなりの量入れて、それに適したソーダをお客様に合わせてもらって飲まれるっていう。

つまり、ソーダに果汁をちょっと入れて柚子味のソーダだっていうのではなくて、柚子の飲み物でプラスソーダ感があるっていうのを作りたかったんです。これは量販的では決してできない、私たちの今作って今販売するやり方でしか飲んでいただけない。」

 

お客さんに提供されるのはソーダと果肉の目立つ柚子果汁、そしてはちみつ。好みに合わせてソーダに入れる柚子果汁とはちみつの量を調整しながら飲むことになる。自分の味覚とじっくり向き合う贅沢な時間だ。

 

「柚子の良い部分も悪い部分も全て入っている商品かなと思います。だから、お客さんにも賛否ありますよ。あまりにもパンチ力があるので。酸っぱさもあれば辛みもありますし。ただ我々はそういうものを作りたかったものですから。」

 

国造柚子の素顔は、素材の自然体な表現を追求する「甘納豆かわむら」でこそ発見できる。

 

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坂田柚子香

書いた人

東京大学農学部4年生。フィールドスタディ型政策協働プログラム2期生。群馬生まれの東京育ち。中山間地域での課題解決を学ぼうと、2018年夏から国造ゆずに関わり始める。都会に住む学生としてどのような関係を国造地区と築いていけるか模索中。