//【校長先生interview+授業レポ】国造柚子が育む“国造の子”の自信

【校長先生interview+授業レポ】国造柚子が育む“国造の子”の自信

能美市国造地区に位置する生徒数198人の和気小学校。ここでは平成29年度から、5年生が年間約70時間かけて国造柚子をテーマに学習している。2年目にはなんと、小学生がお菓子の商品開発に挑戦したとか。国造地区ならではの挑戦を生む授業はどのようにして始まり、どのように行われているのだろうか。国造柚子学習を推進する能美市立和気小学校校長・辻先生にお話を伺った。

国造柚子を教材に、国造地区の子にしかできない学びを

 

「国造柚子というテーマで授業をすることにした一番最初のきっかけは、平成28年の秋頃の新聞で、国造柚子の後継者がいないと取り上げられていたこと。それを見て、僕も校長として初めてこの地区に国造柚子っていうものがある、柚子団地っていう場所があることを知って。

僕がいつも大事にしているのは、その地区にしかないものはすごい価値あるものだということ。なので、国造地区にしかない国造柚子は学習材として取り上げる価値アリだなと。

なぜかと言うと、能美市の教育大綱の中に『ふるさと学習の推進』とある。つまり、ふるさと愛を育てましょうと。自分の地域を誇りに思って、地域のことをずっと大事にしていく。近くにいても遠くにいても生まれ育った地域を想う。国造柚子を学習材として取り上げることは、間違いなくふるさと愛を育むことに繋がりうるだろうなって確信を平成28年に持った。

それで、『総合的な学習』という、週に2時間・年間合計70時間ある授業の中に柚子を丸ごと取り入れてしまおうと思ったんです。」

その地区にしかないものには教材として価値がある、それは辻先生の持つ教員としてのポリシーだ。しかし和気小学校に赴任した当初の辻先生は、国造地区の属する能美市の特徴にはあまり気づいていなかったという。

「最初は国造柚子まで気付かなかった。プロスポーツ選手を多く輩出してるから、スポーツの盛んな市かなってくらい。

ところが、だんだん山に希少生物がいるってことがわかって。蟹淵(がんぶち)という池があって、そこにはルリイトトンボとモリアオガエル、その二種くらいしか見つからない。池の中に生き物二種しか見えない、不思議じゃない?

そういうところから能美市の特徴って、最初人に気づいて、動植物の良さがあるんじゃないかなって。その次に柚子に気が付いた。」

和気小学校の児童の中には、もともと自宅の庭先に柚子を植えている子も多い。しかし、そのような子も国造柚子学習を始めるまでほとんど柚子に関心を持っていなかったという。

「子供たちの話を聞くと、柚子の木があるのが当たり前、普通の風景だと。実が生ったら生ったで柚子湯として使ったり、柚子味噌をじいちゃんばあちゃんが作ってくれたって程度で、別に何か特別なものとか教わっていなくて。

でも深く学習して柚子ってこんなに希少価値が高いんだって、もう一回柚子の木をまじまじと見るようになって。じゃ、柚子の木いつ植えたのって会話になって、じいちゃんばあちゃんが子ども、つまり児童から見たお父さんが生まれた時に記念にもらったものだって聞く。そういう話、結構多いですよ。」

 

 

国造柚子について一年間学ぶことで、小学生はどのように変化し、国造地区にどのような影響をもたらすのだろうか。辻先生の願う子どもたちの将来像を伺った。

「柚子って言葉を聞いたらきっと子供たちは敏感に反応するだろうなって思う。たぶん、産地に能美市って書いてあったら、これは国造柚子なんだって子供らは自慢できるんじゃないかなって。

現に、輪島市の特産品に柚餅子っていう、柚子をくり抜いて中に餅米粉や砂糖を入れた食べ物があるんです。そのお店にこれどこの柚子ですかーって子供らが聞いたら、能美市だって。柚子の産地は他にも高知県とかがあるって勉強してきたわけだけど、きっと自負があるから聞いたのだと思います。子供って、普通産地なんかどこって聞かないですよ。

やっぱり気になるっていうか、自信持ってる証拠だと思うんですよ。柚子の産地は能美市が一番だっていう自信ね。だから裏のラベルに能美市って書いてあると安心する。

子どもたちは十年後もずっと国造柚子の一番の理解者になると思う。きっと後継者になるという芽はなかなか出ないし、僕はみんなになれとは言わないけども、もしかしたらさらに何十年後かには後継者として戻ってきてくれるかもしれない。」

子どもたちの「やりたい!」は一番のパワー

 

 

実際に去年1年間の学習はどのように進んでいったのだろうか。カリキュラムの原案はほぼ校長として作ったものの、詳細はあまり縛らない状態で1年間がスタートするという。

「基本、柚子の実が一年間どんなサイクルで成長するのかっていうのは観察してもらうけど、それから派生することは子どもたちと担任が自分で仕組んでってほしいと思ってるから。一年間の中でいろんな切り口で学習してきたことをまとめて発信してくれればOK。

去年の1学期は、ネット等で柚子について調べながら、花の時期に柚子団地に見学に行って。

2学期は、国造ゆずアロマプロジェクトの方と一緒に柚子ミストを作ったり、マスコットキャラクターを考えてみたり、地元レストランのソリッソさんと一緒にシュークリームとかクッキーとかを作ってみたり。収穫体験にも行ったよ。

11月のゆずまつりを一応ゴールにしていて、共同製作したお菓子の試供品をそこで出した。あと、同時に調べ学習の発表会もした。その発表会の来場者に記念品としてお菓子やマスコットを渡した。自由研究で考えた『ゆず山さん』というマスコットを縫って。プラ板を用意していた子もいたねえ。

あれもこれもって、次々にアイデアが出てくるんだろうね。」

国造ゆずまつりでの出し物は、全て子どもたちが自らやりたいと発案したものばかりだ。中でも辻先生にとって印象的だった成果を伺った。

「やっぱり商品ですよ。

柚子クッキーはそこまでたどり着くと思わなかった。僕は食べ物で何か成果を出すのは難しいと思ったんですよね。調べ学習で終わるんじゃないかなって。でも、子どもたちと担任とで、ソリッソさんを見つけてきて一緒に作った。

実は去年、動物園の園長さんがカピバラの糞を柚子の堆肥にしていて、生った柚子の実を柚子湯としてカピバラにプレゼントしている、その循環をテーマにしてはどうかとアドバイスもらったんです。僕もそれはいいと思ったけど、子どもたちはあんまり乗らなくてね。

やっぱり子どもたちは柚子の食べ物としての魅力を自分で見つけていきました。」

1年間の学習を進める中で、柚子団地などへの見学や、柚子祭りが土日開催であることなど、ハードルはあったという。しかし去年はそんなハードルをものともせず、自発的に学習に取り組む児童の姿が多かったと辻先生は話す。

「主体的に学習したくなるような、エネルギーが湧くような面白さが国造柚子にはある。一年間取り組んだことは、卒業してもきっと忘れないと思う。」

子どもも大人も、一緒に柚子を支えよう

 

 

「総合」での国造柚子テーマ学習、2年目となる今年はどのように進んでいくのだろうか。1学期は「国造柚子について学び、考える」ことを目標に調べ学習を進めてきた児童たちだが、2学期は「国造柚子を広める」ことを目標に活動する。

2学期最初の「総合」は、能美市国造地区ゆたかなくらし協議会発行の「ゆたくら新聞」に5年生も寄稿しようと、「ゆたくら新聞」編集会議として行われた。

5年生の教室を訪れたのは、能美市農政課の村本さん、能美市地域おこし協力隊の阿部さん、そして国造柚子振興プログラムに参加中の大学生2名。

ゲスト4名の自己紹介の後、担任の新保先生の問いかけで、児童たちは1学期に柚子を調べる中で驚いたことを挙げていく。

阿部さんが100%の柚子果汁と青柚子を、大学生が柚子の葉で染めた布を持参して子どもたちに回すと、みんなで触ったり匂いを嗅いだり、元気な反応が教室のあちこちで起こった。

「果汁酸っぱい!」

「トゲ痛かった」

「染め物をやってみたい」

「青柚子を枕元に置いたら寝覚めがスッキリしそう!」

素直な感想を言い合ううち、だんだん話題は国造柚子を広めるためのアイデアに。

「果汁を冷やしてかき氷にしたい」「国造柚子をPRする動画を撮って、ゆずまつりで流したい」「柚子で草木染めした布で枕カバーを作りたい」「校庭に柚子の木を植えたい」…

香りや果汁など、柚子の持つ様々な側面に注目した考えが次々と出てくる。出た案の中には、大人ではなかなか思い付かないものが数多くあった。小学生の発想は止まらず、最後に出揃ったのは何十個もの案。

会議の最後にはゲスト一人一人からコメントが伝えられた。

阿部さんからは「大人が思い付きもしないアイデアがたくさん出て、本当に驚かされました」、

大学生からは「食べ物とか、お家ですぐ出来そうな案はぜひ試してみて感想を教えてください。ゆずまつりでやりたいことが重なったらぜひコラボを」、

「少しの勉強でこんなにたくさん面白いアイデアが生まれたのはすごいこと。和気小学校から柚子が盛り上がっていくのではと期待しています」、

村本さんからは「昨年から育てている柚子の苗に、みなさんでぜひ名前を付けてあげてください」。

この時間で出た国造柚子を広める方法を元に5年生が書いた記事では、これから取り組んでいきたいこととして

「柚子の苗を学校や地域で引き継いで育てたい」

「国造柚子を使ったレシピを考えたい」

「キャラクターを生かした商品開発をしたい」

「ゆずまつりで屋台を出したり、動画を流したりしたい」

という4点が挙げられていた。

編集会議を見守っていた辻先生は言う。

「この編集会議に今年の子供たちが乗ってくればいいんじゃないかなって思うけど、無理やり押し付けようとは思わない。これも経験から来るものだけど、大人がこれやったらいいよって言ったことはあまり続かないよ。やっぱり子供たちがこれやりたいって言ったのは続く。

とにかく次の子供たちは何を考えていくのかなって、それを楽しみにしてます。」

 

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坂田柚子香

書いた人

東京大学農学部3年生。フィールドスタディ型政策協働プログラム2期生。群馬生まれの東京育ち。中山間地域での課題解決を学ぼうと、2018年夏から国造ゆずに関わり始める。都会に住む学生としてどのような関係を国造地区と築いていけるか模索中。